リノベーションの打ち合わせで、施主が最初に持ってくるのはたいていインスタグラムの写真です。それ自体は悪くありません。ただ、写真に写っているのは竣工直後の状態で、5年後・10年後の姿ではありません。

リノベーションで後悔しない素材選びの考え方

経年変化を前提に選ぶ

無垢の木材は時間とともに色が深まります。真鍮は酸化して緑青が出ます。大理石は使い続けると表面に細かい傷が入ります。これらの変化を「劣化」と見るか「味」と見るかは、施主の価値観によります。重要なのは、選ぶ前にその変化を知っておくことです。私たちは素材を提案する際、5年後の状態のサンプルも一緒に見ていただくようにしています。

メンテナンスの手間を正直に伝える

カラーラ大理石のキッチンカウンターは美しいですが、酸性の液体(レモン汁、ワインなど)が付着するとシミになります。年に1〜2回のワックスがけが必要です。無垢のオーク材の床は、水拭きを繰り返すと反りが出ることがあります。これらの情報を事前に伝えた上で、それでも選ぶかどうかを施主に判断していただきます。

産地と製造方法を確認する

同じ「大理石」でも、産地によって硬度・吸水率・色のばらつきが異なります。イタリア・カラーラ産とトルコ産では、見た目が似ていても物性が違います。木材も同様で、国産杉と輸入杉では含水率の管理方法が異なり、施工後の収縮率に影響します。素材を選ぶときは、産地と製造方法まで確認することを習慣にしています。

照明条件下でサンプルを確認する

素材のサンプルをショールームで見るのと、実際の空間の照明条件下で見るのでは、色と質感の印象が大きく変わります。特に、電球色(2700K)と昼白色(5000K)では、同じ素材でも色が全く異なって見えます。私たちは必ず、採用予定の照明器具の下でサンプルを確認してから最終決定します。

コストと耐久性のバランス

高価な素材が必ずしも長持ちするわけではありません。逆に、適切なメンテナンスを前提とした素材は、初期コストが高くても長期的には経済的です。予算が限られている場合、私たちは「目に触れる面積が大きい場所」と「手で触れる頻度が高い場所」に予算を集中させることを提案します。

素材選びに正解はありませんが、後悔しない選び方はあります。竣工後のメンテナンス方法も含めて、設計の段階から一緒に考えましょう。