代官山のビストロを設計したとき、オーナーのY.F.さんから「隣のテーブルの会話が気にならない空間にしてほしい」というリクエストがありました。これは照明や素材の選定と同じくらい、設計の核心に関わる要求です。

飲食店のインテリア設計で音環境を考慮すべき理由

飲食店で音環境が重要な理由

飲食店の「居心地」を決める要素として、照明・素材・音環境の三つは密接に関係しています。音が大きすぎる空間では、会話のために声を張り上げる必要があり、それがさらに騒音を増幅させます。逆に、適切な吸音設計がされた空間では、同じ人数でも会話が自然な声量で成立します。

吸音素材を内装に組み込む方法

代官山のビストロでは、天井面に吸音性能を持つ有孔ボードを採用し、その上にブラックウォールナットの突き板を貼ることで、デザインと機能を両立させました。壁面には布張りのパネルを一部採用し、視覚的なアクセントと吸音効果を兼ねさせています。吸音素材は見えないところに隠すのではなく、デザインの一部として組み込むことが重要です。

照明と音環境の相互作用

照明が暗い空間では、人は自然と声を落とす傾向があります。これは心理的な効果です。代官山のビストロのディナータイムは、テーブル面の照度を意図的に低く設定し、会話が自然と静かになる環境を作っています。照明設計と音環境設計は、別々に考えるのではなく、空間全体の「雰囲気」として統合して設計します。

ランチとディナーで空間の印象を変える

同じ空間でも、照明の設定を変えることでランチとディナーの雰囲気を変えることができます。ランチタイムは窓からの自然光を主光源とし、明るく活気のある雰囲気を作ります。ディナーは人工照明を主体に、照度を下げて落ち着いた雰囲気に切り替えます。この切り替えは、調光システムを使って事前にプログラムしておくことができます。

施工後の音環境の確認

音環境は、実際に人が入った状態でないと正確に評価できません。代官山のビストロでは、オープン前に関係者を集めて試食会を開き、実際の会話の音量で音環境を確認しました。その結果、一部の壁面に追加の吸音パネルが必要と判断し、オープン前に対応しました。竣工後の確認と微調整は、音環境設計において特に重要です。

飲食店の「また来たい」という気持ちは、料理だけでなく空間の居心地から生まれます。音環境の設計も、ぜひ設計の初期段階から相談してください。